ケアマネさんから、お義母さんのキーパーソンお願いしますねって言われたんだけど、
よくわからないのに「はい」って言っちゃった。
キーパーソンって何のことだったんだろう。
Aさんのご主人のお母さんは、要介護1でご自宅で介護サービスを受けながら生活していました。
ある日、いつもお義母さんのお世話をしていたご主人の妹さんが入院することになり、ケアマネージャーさんからAさんへ上記のような連絡がありました。
お義母さんの近所に住んでいた妹さんとは違い、Aさんは遠方で住んでいるので、キーパーソンと言われてもお世話をしてあげられる自信がなく、Aさんは困っています。
Aさんのような状況や、突然身内の介護の必要度が高まり、キーパーソンに抜擢される方も多いと思います。介護の現場でよく使う言葉ですが、いったい、キーパーソンとは何なのか、何をすればよいのかを説明していきます。
キーパーソンとは
文字通り、問題解決のためのカギを握る人物という意味ですが、介護の分野ではいろいろな意味を含みます。家族や、親族の中からご本人を一番よく知る人物が選ばれることが多いです。
緊急連絡先としての役割
介護を受ける人の身に何かあったときに一番に連絡が来ます。緊急搬送時には状況の説明があり、搬送先の希望や、ご本人の病歴などをお伺いする場合などがあります。入院が必要な場合には、手続きを速やかに行う必要があります。
介護の方針を決めていく中心人物としての役割
介護の方針はご本人の希望とキーパーソン、ケアマネ、また利用している各サービス事業所の担当者などの意見を踏まえて決めていきます。ご本人が意思決定能力に欠ける場合、キーパーソンの意見が大きな影響を与えるでしょう。
また、可能な限りサービス担当者会議へ参加し、意見交換を行うのが望ましいと考えます。
時には事務手続きや、支払い手続きをする
ご本人に契約書類へ署名する能力がない場合や、支払い手続き・支払い能力がない場合はキーパーソンが代行して行います。
ご本人やほかの家族との情報伝達の役割
介護職員からご本人へお願いがあっても頑固な性格の方の場合、なかなか聞き入れてもらえない困難なケースがあります。そのような時はキーパーソンにお願いし、別の立場からも伝えていただくことで問題解決の糸口を探すことがあります。
また、キーパーソンは家族の中から選出されることが多いので、他の家族への介護サービス内容の説明は省き、親族を代表して説明を聞き、同意していただくことになります。他の家族が後から知り、そんなこと聞いていない!とトラブルにならないよう、キーパーソンとなる人は親族間での情報共有をお願いします。
キーパーソンになっても無理はしないで
キーパーソンは大切な役割がありますが、身体的・精神的に無理をする必要はありません。キーパーソンだからといって、必ずしもやらなくてもよいことや、こころを楽にしてキーパーソンを引き受けられる対策を教えます。
必ずしも介護を手伝わないといけないわけではない
Aさんの場合、遠方に住んでいるため、なかなかご主人の妹さんのようには介護をできないと思います。仕事を休んだり、大変な思いをしてまでキーパーソンとして介護をしなければならない、というわけではありません。臨時的に緊急連絡先としての窓口になることや、妹さんがしてくれていた部分の穴埋めを介護サービスで補えるかを検討する相談役としてケアマネージャーと一緒に考えていけばよいでしょう。
できること、できないことを事前にケアマネージャーに伝えておく
キーパーソンとして自分ができる範囲のことをあらかじめケアマネージャーに伝えておくことで、円滑に物事が進んでいく場合があります。無理せず、正直に話すことが大切です。
- 緊急時以外の内容では連絡を受け取れる時間帯を決めておく
- 介護を受ける方の様子を見に行ける頻度や曜日、時間帯を伝えておく
- 2に合わせて自分ができる介護の内容を伝えておく(例:毎日の食事は作れないが週末なら作れる)
- 親族間の不仲があり、こちらから連絡できない重要人物がいる場合は伝えておく
- 金銭面の援助ができるかどうか伝えておく
- サービス担当者会議へ参加できるかどうか。できない場合、別の方法で意見を伝えてもらう、情報を伝達してもらう。
一人で悩まない、チームで介護する気持ちでいよう
キーパーソンとなり、困難なことが多くあると一人で思い悩んでしまうかもしれません。ですが、ケアマネージャーをはじめ、施設職員や、介護サービス事業者はチームとなってその人の介護をしていきます。どうか悩み事は早めに周囲へ相談していきましょう。その道のベテランさんにかかればすぐに解決できる問題もあるかもしれません。
それぞれの市町村には必ず介護の相談窓口もあります。例えばケアマネージャーとの折り合いが悪く、相談することも難しくなってきたら、思い切って担当交代をお願いしてみるのも良いかもしれません。
親族からキーパーソンを選出できない場合はどうなる?
子どもがいない、親族とは疎遠でキーパーソンを引き受けてくれる人がいない、といった事情がある方も少なくありません。そのような場合、ご本人をよく知る人物からキーパーソンを選んでいくことになります。例えば、
- 担当ケアマネージャー
- 入居施設の職員
- 近所の人や友人
このような人たちが引き受けるケースがあります。
キーパーソンになっても身元引受人や金銭的な保証人になるわけではありません。
要するに、ご本人のことを思って介護の方針を決めることができる最良の人物が選ばれるのです。
キーパーソンに向いていない人物
逆に、親族ならだれでもよいというわけでもありません。ケアマネージャーや、介護サービス事業者側から見て、キーパーソンに向いていない人物がキーパーソンになってしまうとトラブル解決が難しくなったり、連絡調整がしにくいなどの問題が生じてしまいます。
私が思う、キーパーソンに向いていない人物をあげてみます。
- キーパーソン本人の健康面の不安がある、または認知機能低下がある。
- ご本人と不仲。本人の意思を全く尊重しない。
- 自分の都合ばかりで施設・介護サービス事業側にも都合があることを理解しない。
- 介護保険にできるサービスを理解せず、無理を言う。
- ご本人のおかれている状況や体調を全く把握していない、または興味がない。
老々介護も多くなっているので仕方ないのかもしれませんが、このような方がキーパーソンになってしまうと、円滑に介護の問題が解決できません。
まとめ
介護の分野においてキーパーソンとは、ご本人の残りの人生を一緒に決めていく重要な人物だと言えます。ですが、すべてを背負って苦労しなければならないというわけではありません。周囲を頼って、時には頼られて、ご本人のために動いてあげることができれば良いのかな、と思います。
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